日本動画協会からアニメ産業リポート2021年度版サマリーが出た。
アニメ産業レポート2021 サマリー(日本語版) | 日本動画協会
以下これを要約して、日本のアニメ産業の現状を見ていく。
アニメ市場とコロナ禍の影響
2020年のアニメ市場はコロナ禍におけるアニメ市場前年比 96.5%、2 兆 4,261 億円となった。コロナ禍の影響で減少したが、比較的軽微な減少かもしれない。ウインドウ別の売上げでは。配信は増加、海外は微増となった。映画はコロナ禍の影響を強く受けたはずであるが、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の空前の大ヒットによって興行収入を前年比 10.8%減に押し留めた。
2020年ー2021年のアニメ界トピックス
市場減少となったアニメ産業であるが、アニメに対する需要は依然として強い。企画数が多いにもかかわらず、制作現場が追いついていない状況で、制作費は上昇傾向にある。しかし、コロナ禍によるスケジュールの遅延による売上げの減少があった。
遂に国内市場と海外市場が逆転
国内市場が前年比 90.3%の 1 兆 1,867億円だったのに対し、海外市場が前年比 103.2%の 1 兆 2,394 億円となり、国内市場より海外市場が大きくなり逆転となった。コロナ禍でも伸張した海外市場の要因を考えると、そこにはアプリゲームの影響があるかもしれない。
テレビアニメ制作分数
テレビアニメ制作分数は2018年ピークを迎えた後、2019年、2020年と減少傾向にある。
日米中に見るコロナの影響
日本は映画全体興行収入が前年比54.9%の 1,433 億円であったにもかかわらず、アニメの興行収入となると、前年比 89.1%の 617 億円という史上 3位の興行収入を記録した。と言っても、これは不動のものと思われていた『千と千尋の神隠し』の記録を超えた
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』があってこそのことで、この作品がなければ、おそらく前年比 30%前後の数値になっていたことが予測される
アニメ映画の興行収入
コロナ禍のなかで、映画興行が危ぶまれるなか、結果的に2020年は617億円という高い水準になった。大きな要素が、劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の大ヒットによる興行収入400億円以上という記録である。この他、興行収入が10億円を突破した作品は8本と前年の16本から半減しており、コロナ禍の苦境を『鬼滅の刃』が下支えした年となった。
アニメ配信の市場
2020年の国内アニメ映像配信売上は前年比135.8%の930億円へと急伸。2018年に逆転したビデオパッケージ市場との差をさらに広げ、遂に2020年はコロナ禍で縮小が続いたTVアニメ市場を上回った。コロナ禍の巣ごもり需要を背景にアニメの視聴ウィンドウが配信へと大きくシフトしたことが表れた結果となった。
日本のアニメの海外への展開状況
日本のアニメの海外へは順調に売上げが伸びている。契約数の順位は、1位アメリカ、2位カナダ、3位韓国、4位台湾、5位中国、6位イギリス、7位香港、8位タイ、9位フランス、10位マカオとなっている。
世界の地域別にみるとアジア地域が全体の29.7%と第一位、第二位で欧州、ついで中南米、オセアニアと続く。基本的に世界的に配信されるようになっている現状がうかがえる。
日本のアニメ制作会社の分布
東京近郊に集中しているアニメ制作会社であるが、地方進出も進んでいる。
アニメ制作現場では慢性的な人手不足があり、人材確保のために教育機関と連携して学生の指導や採用活動を行っている。制作工程のデジタル化もアニメ制作会社の地方進出を後押ししている。
コメント
日本のアニメ産業は比較的コロナ禍の影響は小さかったようでなによりである。そして、劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の大ヒットはアニメ界と映画館の窮状を救ったといえるかもしれない。アニメの売上げの市場は多様化した。アニメの国内売上げと海外売上げが2020で逆転、海外の方が大きくなった。またアニメの配信ビジネスも伸長している。
2020年は売上げ減少したものの、長期的にはアニメ産業は発展していくだろう。しかし慢性的な人手不足に悩まされている。また、アニメの制作スタッフには海外人材が多く記載されるようになった。