アニメ猫のアニメ日記

アニメに関しての情報を書き連ねていきます。

脚本が緻密と話題の「オッドタクシー」の脚本が惜しいなと思った理由


脚本をほめる声が多いが、なぜかアニメ猫はそう思えなかった。その理由について解説する。

基本情報

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TVアニメ「オッドタクシー」公式サイト

オッドタクシー - Wikipedia

登場人物達が各種の動物に擬人化されている擬人化アニメでありながら、犯罪にまつわる人たちを描くクライムサスペンス風群像劇。原作のないオリジナルアニメである。

さまざまな伏線をきちんと回収していく緻密なストーリー展開

昨今のアニメにはめずらしく伏線はきちんと回収するアニメである。主人公であるタクシードライバー小戸川を中心としてストーリーが進む。小戸川のタクシーにはさまざまな客が乗り込んで同時に事件も舞い込んでくる。行方不明になった女子高生、その行方を追いかける街のチンピラ、不正を行っている警察官、そして小戸川の行きつけの病院にはユニークな医者といわくある看護婦と多くの人物がかかわっているが、それらの事情を描きながらストーリーは進行していく。

かわいいキャラクターが演じるリアルな人間模様

登場するキャラクター達は、かわいいキャラクターデザインとは裏腹に実にリアルな人間たちである。一風変わったタクシードライバー、ウソのプロフィールで婚活する男、売れないでラジオで愚痴をこぼす芸人、ゲームのし過ぎでおかしくなったゲーム中毒者、犯罪者やヤクザ、犯罪者と手を組んでいる警官、承認欲求の塊のユーチューバー、裏があるアイドルなどなどキャラデザとは相反するリアルな人間模様が描かれている。

オッドタクシーのタイトル

オッドタクシーのODDという英単語の意味は作中では「片割れ」みたいな言い方をしていたが、辞書的には第一番目には「奇妙な、変な」というもの。第2番目には「奇数」という意味。第3番目に「片割れ、はんぱな」なのでODD TAXIといえば、通常なら「奇妙なタクシー」という意味になる。

実写でやった方がよかったのではないか?

ストーリー展開やキャラクター達の言動を見ていると、これは実写で作ったほうがよくないか?と思った人は多いのではないか。実はこれは意図的なものなのだ。次のインタビューを読むとわかる。

『オッドタクシー』TVアニメ初監督の木下麦は、いかにして傑作サスペンスを生み出したのか 制作の過程に迫るインタビュー | Anime Recorder

かわいいキャラクター達に、人間のドロドロしたような部分を演じさせることのギャップを描きたいのが監督の目的だったわけである。ちなみにオッドタクシーのおじさんを主人公にするという元ネタは「恋愛小説家」のジャック・ニコルソンらしい。なるほど。キャラデザは木下監督が兼任し、脚本担当の此元和津也氏が人間のドロドロ部分を脚本で描いた。

でもやっぱり実写の方が迫力が出たと思うな

監督の意図はわかったが、やっぱり実写の方があっている脚本だったとは思う。各話のラストでヒキのエピソードでビックリしたしてたけど、こういうシーンは実写でやった方が迫力が出るんじゃないか?動物のキャラでやっているからカワイイ処理になってしまている。のが残念、惜しい。まあ、元々はアニメを作りたくて、実写的サスペンス要素を入れたいからこうなったのだから、しかたないんだが。

アニメ独自の動きの良さはないが、会話のおもしろさで補っている

この作品としてはアニメらしい動画などの表現は少なめで、あんまり動きのない作品である。その部分を会話のおもしろさで補うような形になっている。会話劇はおもしろい部分が多いかもしれないが、合わないような部分もあったな。たとえば、芸人の漫才部分などはお笑い芸人が好きでないとつまらないし、ラッパーの人の会話は慣れてないと何と言っているかわからないだろう。

木下監督について

『PUI PUI モルカー』や『ポプテピピック』、学生アニメーション発の次世代クリエイター - メディア芸術カレントコンテンツ

木下監督は、多摩川美術大学卒業のアニメータ―出身。1950年代のアメリカのアニメーションが持つ風合いを再現した卒業制作を行っているそう。なるほど、オッドタクシーをみてアメリカのアニメのデザインに近いと思ったら、その通りだった。

オープニング映像にはミスリードする仕掛けがほどこされていた

アニメのオープニング映像では作品紹介をするために、しばしばネタバレが多くあるが、これを利用したミスリードがオッドタクシーのオープニングでは仕掛けられていた。

TVアニメ「オッドタクシー」監督・木下麦と アニメーション作家・山田遼志による OPを巡る対談! – NEWREEL

ミステリー要素の多い作品だけに放映途中では、ストーリーの予想や考察が多くされるものだが、このオープニングのミスリードによって考察は盛り上がったかもしれない。

小戸川の声優・ 花江夏樹と芸人コンビの声優さん達

小戸川の声は 花江夏樹さんが担当。鬼滅の刃の竈門炭治郎の声を演じている人である。このアニメでは小戸川は感情を殺して朴訥に話すことになっており、せっかくの花江さんの演技力が生きてない。もったいない使い方であった。惜しい、惜しい。

また作中の漫才コンピ・ホモサピエンスの声は本物の漫才芸人さん達が起用された。これは、リアルな漫才っぽい雰囲気を出すことには成功しているんだが、いかんせん本物の声優さんに比較して演技のレベルはやっぱり劣っている。

なお、オッドタクシーは音声を先に録音して、それに映像を合わせて作るプレスコ方式で作られている。

異色アニメ『オッドタクシー』はこうして作られた メインスタッフ座談会② | Febri

プレスコ方式なので、会話の自然さはでているのだが、初期のお話では、会話と映像があっていない部分があったりした。

脚本をほめる声が多いがアニメ猫はそうは思わなかった

ネットでは脚本がいいという声があったが、アニメ猫はそうは思えなかった。確かに伏線回収という点では他のアニメ作品と比較してしっかり回収しているのだが、1クール全13話のラストで何かお話が一つに収束していった感がない。ラストでは一応、タクシーが海にダイブしてクライマックスになるが、小田川の問題は何も解決してないと思える。小田川の人間が動物に見える症状と不眠は解決したのかもしれないが、小田川の心は癒されたとかいえるのだろうか?ラストに何らかの解放感や快感がないと脚本の良さが出てこない。ラストではとりあえず、いろいろな謎が明らかになるものの、ああ、そうかという納得感で終わるので、物語の充足感が少ない。

脚本で人物エピソードを詰め込みすぎて、心情描写が少なすぎた?

主人公の小田川をはじめとして、心情描写を描くことが少ない作品なので、各キャラに対する思い入れが少なくなる。各キャラの過去を描く時も、かなりそっけない、乾いた描き方をする。尺の都合か、作品の雰囲気なのか、各キャラが乾いた印象なので、ストーリー重視も考え物じゃないか。アニメをはじめとして物語はキャラの心情が深く描けてこそ、ドラマがはえる。この心情描写の演出の少なさがこの作品の課題かと思った。ここらへんは、人物を減らして心情描写を多くした方がいいなと思った部分が、惜しい。

でも、初監督でこれだけの作品はすごいよね

しかし、木下監督はこれが初監督作品で、これだけのアニメを作ったのだからすごい。オッドタクシーの映画も公開されるらしいので、期待したい。

この作品は、お笑い芸人が好きな人、ミステリーやサスペンスが好きな人、群像劇が好きな人にはお勧めの作品である。