アニメ猫のアニメ日記

アニメに関しての情報を書き連ねていきます。

「ハケンアニメ!」: 辻村 深月著 を読んだ


これね。

Amazon.co.jp: ハケンアニメ!: 辻村 深月, CLAMP: 本 

ハケン」とは覇権のこと。派遣ではない。覇権アニメとは、そのクールでのもっとも売れたアニメの事を指す。作中で「ハケンアニメを目指す」というセリフがあるけど、クリエイティブな監督たちはあんまり覇権アニメを作ることには拘ってなかったりする。アニメって売上だけじゃないからね。売上だけでアニメの価値とか人気を測ることってできない。覇権アニメはあくまでそのクールでの一番売上アニメというだけなのだ。アニメの評価はもともと個人的なものであって、それぞれの人にそれぞれの覇権アニメがありうる。

 

本の内容は、アニメSHIROBAKOと同じようにアニメ業界で働く人たちの働きっぷりを作者が取材して、ドキュメンタリーとフィクションを取り混ぜて書いた、アニメ業界人の群像劇っとでもいうのかな。

中心になる主人公は女性三人、アニメプロデューサーの有科香屋子(ありしなかやこ)とアニメ監督、斉藤瞳、そして、アニメーターの並澤和奈(なみさわかずな)。この三名を周辺の人物をからめながらオムニバスっぽく物語が進み、最後にはからみあったストーリーが収束していく。なんだかアニメ業界紹介小説みたい、(いや実際そうだな)なんだけどそれぞれの人物を描きながら、アニメ業界の働きっぷりとか考えていることとかを小説として描いている。

いや、とにかく出てくる人物のひとりひとりがとにかく熱い、というかアニメを作るのが大好きな人たちばかり出てくる出てくる、アニメ業界の人たちなんだから当たり前かもしれないけど、アニメSHIROBAKOみたいだ。

アニメ業界のダークというか暗い部分は、あんまり出てこない。長時間勤務とかお給料が安いとかいうお話は部分的には出てくるが、アニメ制作に情熱を燃やす人たちなのであんまりそういうことは気にしていないらしい。おそらく、メディアなどで「アニメ業界はキツイ」とか言われすぎてて、そういう話題には辟易している、という雰囲気のせいなんだろうか。どちらかというと「いいアニメを作りたい!」という気持ちでいっぱいな人たちが描かれている。

この本を読んでわかることは、アニメ業界人は「アニメが大好きでアニメを愛しててオタクっぽくって、愛に弱い」ということだ。これが本当かどうかはわからないが。

ストーリーの結末は、予定調和とてもいうかアニメみたいにどんどん意味がよくわからんハッピーエンドへと半ば強引に収束していくのは、やっぱりアニメ制作現場紹介小説だなと思わせるな。

アニメSHIROBAKOといろいろな共通点があってこちらは小説だけど、どっか時代性を感じさせる。

それにしても作者はあんまり文章がうまくないwいや文体は簡単だし、難しい単語とか表現は使わなくて読みやすいんだけどね。たまに、文章が乱れるw

作者はライトノベルと通常作家の中間ぐらいの人なのか?文章力もラノベと通常小説の中間ぐらいか?

文体といおうか、人称が乱れてないか?この小説。一人称なのか三人称なのか、あるいはドキュメンタリー風なのか、作者視点なのか、時々変わっているような気がする。この小説は作者がアニメ業界の方がたに取材やらインタビューして書いたらしいが、インタビューやらの文章がそのまま挿入されているようなページがちらほら、確かこの主人公視点だよなと思っていたらドキュメンタリーやら紀行文やらアニメ業界紹介文章みたいになったりするwこんな小説もありなのか、という勉強になったよw

 

熱いアニメ業界を覗いて見たい人だったら読んでおもしろいかも

 

アニメ業界のひとつの豆知識。アニメ業界ではシナリオ打ち合わせが異様に長い。長い割にはアニメのシナリオが弱いと言われているそうだ。とこの本には書いてある。

やっぱりね。ワシもアニメは脚本弱いと思うね。シナリオ打ち合わせを長い時間かけてやっている割にはね。

 

ーー(追記)

アマゾンレビューでも星4つとか星5つぐらいで評判はいいか。

作中で、有科香屋子が高校時代に見てアニメ業界に憧れた作品「光のヨスガ」の元ネタは、「少女革命ウテナ」なのか?

王子千春のモデルは取材源のアニメ監督、幾原邦彦なのかな?うーん、アニメ監督の標準的な人物とも言えないような人選のような気がする。

レビューでは、人物の書き方が薄っぺらいともいわれていたが、その通りとも思ったな。なんか、薄くて、実在感がないというか。

この作者、アニメは好きかもしれないがさほどアニメやアニメ業界にくわしくもないな。一応取材して書いているし、あんまり外れた内容を書いてもいないが、なにかアニメに対する愛を感じないんだよなあ。愛を感じるのは作者の取材に応じて情報を提供した人たちの方かな。