アニメ猫のアニメ日記

アニメに関しての情報を書き連ねていきます。

アニメ「ペルソナ4」のシナリオはゲーム版を基本にしている


前回、「ペルソナ4」についての記述をした。

「ペルソナ4」の魅力を分析してみよう - アニメ日記 

しかしその後、アニメ「ペルソナ4」は実はゲーム版の脚本・演出を充実に再現したものであることが、ニコ生の岸誠二監督の発言で判明した。これはここでも書いてあった。

ペルソナシリーズの歩み : ゲームでひとりごと。

アニメの方はゲームと同じ声優を起用し、ストーリーもほとんど原作に忠実に作ってあるのでファンからの評価も高い

そういうわけでアニメ版「ペルソナ4」のプロットはゲームを元にしていると考えるべきであって、アニメ版の脚本家を評価するのはそのままでは不適切なのかもしれない。

ゲーム版のシナリオ作成方法については下記に記述があった。ディレクターの橋野氏のインタビュー記事。

アトラス・エクスプレス | アトラスネット 

僕の場合は、起案を行い制作を指揮しつつ、時間の9割は現場作業(制作作業)ですね。

「ペルソナ3」の時はゲームデザイン全般をしつつ、シナリオを監修したんですが、「ペルソナ4」の開発現場では、主にメインシナリオを中心に、全体のディレクション(監督)をさせてもらいました。シナリオ部分の試行錯誤の難易度が高いと思ったからです。

ディレクターは、例えば厨房でいうと、料理長のようなものですかね。もてなしのテーマを決めて、全体の構成やバランス、メニューを考えて、各所に指示を出していきます。多分、場合によって直接担当する料理って変わるんだと思うんですが、ここだけは他に任せられないって部分をするというか、クオリティにとって最適を考えながらやります。作りながら、スタッフに任せる予定を、いまいちなので代わってやるとか。

取り上げるというより、「ここは僕がやるから、あそこをもっと時間をかけて面白くして」というようなやりとりで進めます。逆ももちろんあります。自分がやるよりこいつがやったほうがいいものになるぞ…とか(笑)
極論ですけど、開発スタッフ全員が「得意なこと」だけをやって、それで仕事が完結するときに、ユーザーの皆さんに喜んでもらえるものが出来ると思うんですね。

シナリオの作成は、まずは物語のテーマや基本的な展開、ゲームシステムとの連動を元に基礎部分を固めた後、それをシナリオライターに初稿あらすじとしてざっくりとまとめてもらいます。初稿あらすじは、なんとか最後まで繋げてもらっているというもので、読んで楽しめる段階ではありません。

それを受け取ったら、展開やキャラクターなどの演出を付けるために、数ヶ月掛けてあらすじを直していきます。会話についてだけ言えば、この段階でイベントの内容やムード、テンポを決める「簡易セリフ」をおおよそ入れ込みます。例えば、「こんな状況だと、漏れそうになるかもな…」とか、「この場合、普通は怒るよな…」などと想像をしながら、簡易セリフによってキャラ立てをしていきます。どちらかというと、展開演出や各所の意味づけや伏線演出の方がややこしくて(死ぬほど)大変で、キャラ演出は半分ノリで出来るので、けっこう楽しい部類に入りますね


ようやく納得できるものになったら、スタッフから感想を集めます。ここで、スタッフから「このキャラクターの影が薄い」とか「ここの展開は唐突だ」とか、たくさんの突っ込みが得られるので、それを参考に更に改良していきます。

もともとの設定での性格付けはあるにはあるのですが、そこにプラスして、一度でも印象的なシーンのイメージが出来てしまえば、後は雪子ならそれぞれのシーンでどう反応するのか、いきいき出来るような自然な流れを作っていくことが出来ます。あらすじが完成したら、再び、シナリオチームに今度は「台本」にしてもらうため戻します。実際の会話の全てがここで入るので、更に会話が生きたものに拡がっていきます。

台本が上がってくると、再び調整を入れていきます。会話についてだけ言えば、セリフじみたセリフを、自然な会話に聞こえるように直したり、説明がすぎているセリフをカットしたり…なんとかサムさが際立たないように、寸止め加工をしたり…とにかくテンポ重視で直していきます。くだらないセリフも、この段階で更に追加していきます。台本化の段階で追加された面白いやりとりも、もちろんそのまま残し、全体的に「上げて」いきます。

ペルソナ4はゲームのシナリオ(とキャラ)の評価が高いようだが、制作段階はかなり大変な作業を繰り返し行っているようである。脚本が一発でできる、というわけではなく何度もスタッフによるリライトというか推敲、検討が繰り返されて良い物に仕上がっていくということのようである。スタッフから感想を集める、という工程は普通のゲームでやっているのだろうか?少なくともアニメの脚本制作過程ではこれをやっているというのは聞いたことが無い。

アニメのペルソナ4はプロットの完成度が高いと感じていたが、ゲームでのシナリオの完成度の反映であったのかもしれない。また、アニメではキャラのセリフがいまいちのキレがない、と感じたが、アニメ側の脚本家が推敲時間がゲームの制作などに比べてなかったのか?と推測させるものではあった。

教訓

売れるゲームとかアニメを作るならこれぐらいはシナリオ作成に手間をかけたほうが良いだろう。当たり前なんだけど、なかなかみんなできないんだろうな。